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三国志系空想小説正式連載開始しますw
なんだか、少しですが興味を持ってくださる方もいらっしゃるのでw

私としても形にした以上、いつかは誰かに見てもらいたいという気持ちがあってのことです。
それが、今なのかどうかは別にしてw

こういう形を思いついたのも何かのきっかけだと思いますので・・・

賛否両論あると思いますが、どんな意見でも管理人は喜びますので読んだ方で思うところのあった方はコメント等いただけるとうれしいです^^

では本文は続きから。

正式連載1回目なので前回の抜粋部分と重複箇所がほとんどですのがw
   三国志 武幽電

   とある広告。
『ついに今春発売決定!
   ここが凄い!
   その一, 携帯ゲーム機初の光発電システム搭載!  
         わずかな明かりでも半永久的に稼動。
   その二, 立体投射システム搭載!  
         なんと画面のいらないゲーム機。
   その三, 当社のスーパーコンピューターによるネット機能!  
         電源を入れるだけでゲームの世界へ。  

   ゲームの域を越えバーチャルに魂を吹き込んだ自信作!その名もVS。  

  …あなたは現実を忘れる。    』  
     序  

 それは全くの偶然だった…  
 いや!事故と言ってもいいかもしれない。
 何が原因で何故あのようなものが出来たのか発売を一ヶ月後に控えた今も全くわからないからだ。 
 ただ今まで何度もそうであったように私達は次世代ゲーム機の開発にあたっていただけだ。 市販に出す携帯端末機。それの親機にあたるホストコンピューターの開発だ。 
 過去にあったインターネットを経由したゲームと理屈は同じだ。 
 パソコンの代わりに携帯端末機を持ち,電話回線を通してゲームにアクセスしていたものが特殊な電波により,ゲームの為だけに特化したスーパーコンピューターにアクセスする。 
 そういう形態のゲームになるはずだった。 
 実際,開発は順調に進んでいた。多数のユーザーからの多様で多量な情報に対応し,増え続けるであろうソフトの為の容量の確保や拡充計画も全てが上手くいっていた。 
 それなのに… 
 同じものを同じように作ってもあれと同じ物には決してならなかった。 
 それ自体には何ら変わった事をした訳ではないのだから当然のことだ。 
 わからない…どうすればいいのか。 
 
 上層部はそれをよしとした。一般の為のコンピューターは同じ物を作るために組み立ててみた普通の物を使用することとし,それに関してはその実用性と特殊性を試す為にあるソフトを私達に開発させたのだ。 
 神を冒涜するような… 
 あれが今ここにあること。それこそが神の奇跡としか言い様がない。 
 それによって行われる行為が神に対する冒涜だとするなら天上におわす神にも自虐心があるとでも言うのだろうか…  
 我ながら馬鹿なことを考えている… 

 まあいい…私は言われたことをやるだけだ。それにより何が起ころうと,もう知った事ではない。私はこの仕事で大きな報酬を得た。それで充分だ… 

 神だの仏だのを恐れる歳でもない。
 
 今となっては神すらも… 
 神すらも人間は支配出来るのかもしれないのだから…  

 一の章  ヘルプ

「えー!そりゃないよおじさん!いくら何でも定価って事はないじゃん。俺とおじさんの仲だろ。ちょっとくらいまけてよ」 
 狭苦しい店内で響いたその声には切実な響きがこもっている。「駄目駄目。いくら玄くんの頼みでもこっちも商売だからね。VS端末はどんなに需要があっても出荷量はホストコンピューターの指示する台数しか出せないんだよ。第一回の出荷は五十万台。これ以上は最低でも半年は出荷されない。言ってみればレアってことなんだ。そのスペックの高さは前評判でも折り紙付き,しかも金色のね」 
 視線を動かさずに全てを見渡せる狭い店内の奥で白髪交じりの初老の男性がカウンターの向こうに座っている。 
 そのカウンターに身を乗り出して顔を近づけてくる玄の額を店主は押し返す。 
 今年高校二年生に進級したばかりの徳水 玄はあまり背の高い方ではない。昨年の身体測定では百七十センチにはまだ五センチも足りなかった。 
 だから店主に詰め寄ろうとすればどんどんカウンターの上に身を乗り出さざるを得ないことになる。
「つまり,仕入れれば仕入れた分だけ確実に売れるんだよ。利益が計算出来るんだ。うちみたいな小さい店には滅多にないことだよ。しかも,VS端末を仕入れるためにいろいろ手を回したおかげで多少元手もかかってる。どうしたって定価で売らざる得ないんだよ。本当ならプレミア扱いでもっと高く売りたい位なんだから」 
 店内には他にお客はいないため客と店主の会話は誰にも聞かれてはいない。
「わかってるよ!だからどうしても欲しいんじゃないか!どんなにレアでもおじさんのところなら必ずどっかから手に入れてくると信じて裏予約したんだから」 
 玄は顔面を変形させながら店主の手を押し返してとうとうカウンターの上に乗り上げて正座した。
「ちょっと玄くん。カウンターの上に座らないでよ。売らないとは言ってないんだよ。むしろ玄くんに売ってあげるつもりでちゃんと一つ残してある。他の場所では開店と同時に売り切れ確実で実際に売り切れているし,ここだって開店十五分で私が掻き集めた五十台のうち四十九台は完売してる。にも関わらず学校が終わってからここに来た玄くんはまだ購入出来る可能性が残っているんだ。後は定価の四万九千八百円(税抜き)を払ってくれさえすればいいんだよ」
「・・・だっておじさんは学校さぼって買いに来たって売ってくれないのはわかってるしさ。だから我慢して学校にも行ったんだよ。お願いおじさん!四万にまけて!」 
 カウンターの上で正座をしながら両手を合わせて頭を下げる玄に店主は大きく息を吐き出した。
「玄くん…無茶を言わないでおくれよ。お金がない訳じゃないんだろう?」
「そりゃ…確かに財布には六万円きっかり入ってるよ。学校に内緒で夜中にコンビニで働いて必死で貯めたんだ」 
 店主はそれを聞いて微笑む。
「いいねぇ玄くんは。本当にゲームが好きなんだね」
「何だよ今更。ゲームが死ぬほど好きでなきゃおじさんと付き合っていける訳ないじゃないか」 店主はそれを聞いてもっともだと頷き,声を出して笑う。
「頼むよおじさん!端末に定価を払っちゃうとどうしたってソフトが買えないんだよ。せっかく端末を手に入れてもソフトがなかったらMPのない魔法使いと一緒だよ」 
 いかにもゲーム好きらしい例えを持ち出して手を合わせながらひたすら頭を下げる。
「なるほど,相変わらず上手いこと言うなぁ。確かにそりゃ宝の持ち腐れ,役には立たないなぁ」
「だろ!だから何とかしてよ。何もVSを必ず値引きじゃなくてもいいんだ。同時発売のRPG『あるいはこんな冒険者』と一緒に税込みで六万!お願い!」
「うーん。あれだって定価は二万二千八百円だからね。消費税も合わせれば七万六千円を超えるんだよ」 店主は手元の算盤を弾きながらカウンターの上に正座する玄を見上げる。「いくら玄くんでも七万!税込み七万までが限界だよ」 
 店主の言葉にがっくりと肩を落とした玄はすぐに勢いを取り戻して店主に詰め寄る。
「そんなぁ!…じゃあつけ!つけといてよおじさん!後二週間すれば残りのバイト代が入るからさ」
「じゃあ,それからおいでよ。取っておいてあげるから。さすがに高校生のうちからつけで物を買うなんて事は覚えさせられないからね」 
 店主は優しく玄を諭す。
「えー!それはないよおじさん!おじさんが青少年の教育に厳しいのは知ってるけどさ。そこを何とか!こんな宝箱を目の前にしながら引き返すみたいなこと出来ないって!」
 またしてもマニアックな例えを持ち出して必死に食い下がる。玄だって普通の例えが出せない訳ではないのだがお互いに認め合う程のゲーム好きの二人だ。こういった例えの方が気持ちを理解して貰えるらしい。
「うーん…確かに。宝箱が見えてるのに瀕死の重傷を負った身で後数歩が歩けない。しかしかろうじて帰還の呪文は使える…全滅すればそこまでの苦労は全て水の泡。敵と遭遇しないと信じて数歩を強行するか,それとも泣く泣く帰るか……それまでの苦労を考えると帰るしかない…辛いなぁそれ」
 妙に具体的な納得の仕方をしながら頷く店主。
「おねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおじさん!」 
 怪しげな呪文を唱えるかの様にひたすら懇願する玄を見て弱り果てた店主。端末数に限度があるVS関連の物は何から何まで割高である。需要が高い割に購入出来る人数は限られているためソフトもその台数を遙かに上回る量は市場に出しても売れない。
 だがそのVSシステムを利用したゲームは絶対に利用者を虜に出来る。
 だから高い開発費の割に少ない売り上げ数をカバーするだけの値を付けざる得ないソフトにもVS端末所持者の購買意欲はいささかも衰えない。
 それ程までにメーカーはVSシステムに自信を持っている。
 店主は玄の為に取っておいた最後の一台を置いてある自分の背後の棚を見て溜息をついた。
 徳水 玄は自分の数少ない友人である。自分の趣味と実益を兼ねたこのリサイクルゲームショップ『芸夢』が開店した時の一番最初の客でもある。天涯孤独の我が身をおじさんと呼んで慕ってくれる得難い友人である。
 本当ならただであげてもいいくらい玄が可愛いというのが本音である。
 ただ,だからこそ玄を特別扱いして玄を甘やかしたくないのである。欲しい物は自分で努力して稼いだお金で正当な対価を払って買う。自分の孫や甥のように思っている玄だからこそ,そんな当たり前のことを忘れて欲しくはないのだ。
 それでもあまりに必死に頼む玄の様子にちょっとは妥協してもいいかと思い始めた頃,その視界の端に一本のソフトが目に入った。
 店主は「あっ」と小さく呟くと自分の思いついた考えにいたく満足して満面の笑みを浮かべた。
「玄くん!」
「な,何だよ…おじさん。突然大きな声出してさ。もしかしてしつこくて怒った?」
 慌ててカウンターを降りて姿勢を正した玄を見て笑って首を振る。
「違う,違う。玄くんは結局のところ六万円でVS端末と何か一つソフトが手に入ればいいんだね。RPGは二週間後のバイト代の後でも構わないよね」
 玄は突然の店主の言葉にちょっと考える仕草をすると慎重に答えた。
「…うん。確かにそうだけど,確か今日発売のものって…後はギャルゲーじゃなかったっけ。興味ない訳じゃないけどそれにお金は使えないよ。これから欲しいソフトもどんどん出てくる予定だし」
 玄の言うギャルゲーというのは物語の主人公になった自分が,出会う様々な女の子達と仲良くなっていくというものである。 玄だってバーチャルで投影される女の子達に興味がない訳ではないが予算に限りがあるのなら自分の好きなRPGやシュミレーション系のゲームを優先したい。
「玄くんの好みはわかってるつもりだよ」
 そう言って玄の前に差し出したのは透明なケースだ。入れられたMOサイズのソフトには何のデザインもされていない。
 ただそのケースに貼られたシールに印字された文字でそれの識別だけは出来る。
「三国志…ぶ…ゆう…でん。て読むのかな,これ?」
 ケースを手にとって訝しげな表情をする玄に店主は頷く。
「みたいだね。『三国志~武幽電~』VS対応ゲームなんだけど,まだ試作段階っていうか,取り敢えず限定百本で体験版みたいに出されたんだ。非公式な物らしくて店頭には並べずに手渡しで売ってくれっておかしな制約つき。だから大きな販売店よりもうちみたいな小さな店に優先で回してるらしくてVS端末の確保に走ってたときにある経路から手に入れたんだ」
「ある経路って…しかもそんな怪しげな…」
 といいつつ玄はそのソフトを手に取りきらきら輝く目でそれを見つめている。
 店主は想像通りの反応を見せる玄を見てにやりと微笑む。
「三国志と名が付いたらどんな『くそゲー』でも……」
「やらずにはいられない!おじさんこれいくら!結構こういう怪しげなルートの物ってすっげー面白かったりするんだよね。おおー早くやってみたい!」
 そう,徳水 玄の好きなものはゲーム。そして三国志。小学生の頃にはまった某メーカーの三国志のゲームにはまった玄はそれ以後漫画,小説,テレビ,ビデオ,映画,果ては人形劇三国志に至るまでありとあらゆるものを網羅しようと日々,研鑽しているのだ。
「そう来ると思ってたよ。定価は一万五千円だがVS端末とセットできっかり税込み六万円。それでどうだい?」
「買った!ありがとうおじさん!」
 残りのバイト代が入るまでの二週間ひもじい生活を強いられる事になるがもとより覚悟のうえである。
 思い切りよく財布の中身を掴み出してカウンターに叩きつけた。
「毎度あり…あっ,それと玄くん。VSを開けるのはきちんと家に帰ってからにするんだよ。たちの悪いかつあげの的にVSは充分なんだからね」
 走り去ろうとする玄の背中に声をかける。
「わかってるって。本当におじさんはお堅いんだから。なんだか本当の親戚みたいだ」
 玄は店主が外から見てわからないように包装してくれたVS端末を感無量で抱きしめながら笑う。
「私には家族がないからね。可愛い息子や甥がいたらこんな感じかなと楽しませてもらってるよ」
 店主も玄に手を振りながら笑う。
「ちぇっ,皮肉ってら。無理矢理商品値切ろうとする客が可愛いわけないじゃん」
「ほう,無理矢理値切ってるという自覚はあったわけだ」
「おおっと,やぶへび!じゃあねおじさん,またなんかあったら頼むね」
 無邪気な笑顔を見せながら店内を飛び出していく玄を店主は暖かい微笑みで見送る。
「さて…司の言ってる事が本当ならすぐにでも玄くんが戻って来ることになるかもしれないが…どうなることか…」
 『芸夢』の狭い店内へこぼれた,店主の憂いを帯びた溜息は来店したお客の為に作られた笑顔の中に溶けて消えた。


『芸夢』は玄の自宅から自転車で十五分ほどの所にある八千代駅周辺の賑やかな所から少し外れた場所にひっそりと営業している。
 しかし,さえない店構えの割に知る人ぞ知る名店としてマニアの間では有名な店になっている。
 なぜなら本当に面白いゲームは必ずここで手に入るのである。どんなに品薄な物でも注文後三日以内に必ず入荷の連絡が来る。
 そのかわりあまり大きな値引きや中古の買い取り,販売などはほとんどしない。今時珍しいくらいの硬派な店だった。
 その『芸夢』の店先にとめてあった愛用の自転車に飛び乗った玄は『芸夢』から自宅まで過去最速のタイムを記録。
 台所で夕飯の支度をしている母親に挨拶もせずに二階の自分の部屋に駆け込んだ。
 玄の部屋は二階の角部屋にあり南向きで陽当たりもいい。今もレースのカーテン越しに傾いた春の陽射しが差し込んできている。
 しかしその暖かな陽射しが照らす物は二十五型のテレビとその脇に整頓して置かれた無数のゲーム機,さらにうずたかく積まれたソフト。
 壁際の本棚に本がぎっしりと詰まっているかと思えば,ゲームの攻略本や情報誌。コミック版の三国志全六十鰲や様々な出版社から発刊された小説三国志の数々。机の上の本棚に申し訳程度に参考書が見える他は見事なまでに趣味一色に染まった部屋である。

一人っ子である玄は両親にやや甘やかされて育った。ゲームなどの趣味や勉強の成績等に口うるさく注意を受けなかったのである。
 父曰く,何事にも夢中になるのはいいことだ。ただし,自分に責任の取れる範囲でのことだ。どんなに趣味に夢中になろうと構わない,成績が落ちたっていい。
 ただし,それによっておこった不都合に関しては全て自分で責任をとれ。成績が下がっても塾なんか行かせないし,ソフトの買い過ぎで小遣いがなくなっても援助はしない。いつも通りの月々の小遣いだけでやっていけ。
 甘いのか厳しいのかよくわからないと言うのが玄の素直な感想だが,取り敢えず干渉されないのだからやや甘いのだろうという結論で落ち着いている。
 勉強もやれと言われるとやりたくないがやらなくてもいいと言われると不安になるらしく,玄も授業だけは真面目に受けているためにあまり成績は悪くない。中の上と言ったところだ。
 母親からの注文は二つ,きちんと食事の時間を守ることと,テレビとベットの距離を離し,ゲームをするときはベットの上からするようにということだ。
 玄はその言い付けを破ったことはない。自分を理解してくれている両親だったから玄は両親が好きだったし,気さくな両親とは友人のような感覚で会話が弾み話していて楽しくもあった。だから自分も正しいと思える言い付けには異論を唱えた事もないし極力守る様にしていた。
 だからこの部屋にいるときの玄の定位置はベットの上だった。
 部屋に戻った玄は学生服の上着を脱いで机の上に放り投げると定位置であるベットの上で胡座をかく。
 VS端末を足の上に乗せ,にんまりとほころぶ口元を隠しもせずに眺める。
 そして,ゆっくりとその包装紙を剥がし箱から取り出した。
 欲しくて欲しくてたまらなかったVS端末はハードカバーの文庫本より少し小さいサイズだった。左下に十字キー,右下に1ボタンと2ボタンがついている。電源は端末のサイドのちょうど右手の人差し指あたりにスイッチがあり,スタートボタンは左手の人差し指付近にある。
 どこにでもあるような携帯ゲーム機の様だが何よりも違う点がある。その表面にあるべき画面は携帯電話の表示窓ほどしかないのである。その画面とボタン部分を覗いた全ての部分が光発電システムの受光部として黒いフィルム状になっている。
 裏側にはソフトの差込口があるだけで他には何もない。音量の調節は上部のダイヤルでするようだ。
「……これがVSかぁ…」
 携帯ゲーム機にしてはやや大きく、重量感を感じるがその性能からすればむしろ軽すぎるくらいだろう。
 待ち望んでいたVSを手に感嘆の声を漏らした玄ははやる心を抑えつつ,店主から安く売ってもらったソフトを差込口に入れる。
 透明のケースは外から見ただけでマニュアル等の付属品が付いてないのは一目瞭然であったからその内容は全くわからない。
 期待と好奇心でうずく胸を意識しながら右手の人差し指で電源を入れた。
 すると端末の小さな画面から淡い光が溢れだして弾けた。
 玄は予想外の光に一瞬目がくらんだが,やがて光が収まったのを瞼の向こうに感じるとゆっくりと閉じてしまっていた目を開けた。
「YAA-YAA-!こんちわ!あんたが君主かい?ああっすまんすまん!このゲームのプレイヤーっかってことさ。このゲームをプレイする人はみんな便宜上君主ってことなんでそこんとこ頼むぜ。おおっと!自己紹介がまだだったな!おれっちはこのゲームの案内役だ。名前なんかねぇけど,そうだな単純にヘルプって呼んでくれ!OK!?」
「………っていうか,麻雀牌?」
 玄の手に持ったVS端末の画面の上空で威勢良く騒いでいるのは間違いなく麻雀牌であった。大きさこそ手の平サイズと馬鹿でかいが確かに三元牌の一つ『中』である。
「OH---そりゃないぜ君主様。確かにおれっちは『中』に顔が付いてるようなはみだしもんさ。だけどよ麻雀牌に顔がついてるかい?しゃべるかい?手足がついてるかい?」
 そう言った『中』の両脇から細長い手が下から細長い足が伸びて立ち上がる。(もともとが空中にいたから正確にはただ手足が生えただけだが)
 呆気にとられていた玄だがさすがにゲームマニアと自負するだけあってここまでの展開でおおよそ事態を把握した。
「すっげーこれがゲームのキャラの一つって事か。とても立体映像とは思えないし,ここまで会話が成立するなんて一体どんな技術なんだ?どっかに音声認識のマイクが付いてんのかな?」
 端末をひっくり返したりしはじめた玄に慌てた『中』ことヘルプが玄を呼ぶ。
「おぅい君主様!端末の構造なんて今はどうでもいいじゃん。それよりもこの『三国志 武幽電』やるのかやらないのかどっちなんだい?」
 麻雀牌の身体をくにくにとくねらせるヘルプに玄はやるに決まってるだろ!と答える。
「OK。じゃあまずはユーザー登録だ。登録名は?」
 虚空からメモ用紙と大きな筆を取りだしたヘルプが問う。
「登録名?自分の名前でいいのか?」
「基本的には何でもOKさ。ただプレイ中や表彰の時なんかで名前を呼ばれる時はその名前で呼ばれることになるからあんまり変な名前で登録しない方がいいぜ。二度と変えられないしな」
「…わかった。じゃあ,自分の名前をひっくり返して登録するよ。玄 徳水。続けて読むと玄徳になるんだ。だから結構この名前気に入ってるんだよね。なんてったって蜀の国を興した劉備の字(あざな)だからね」
 劉備とは三国時代を築いた三人の英雄のうちの一人。魏の曹操,呉の孫権,そして蜀の劉備である。
 字というのは日本でいうあだ名みたいなもので元々は中国で男子が成人後,実名の他につけた名のことをいい,実名を知られることを忌む風習があったことから生まれたものである。
 劉備であれば姓は劉,名は備,字は玄徳。ということになり,劉玄徳と呼ばれることも多い。
「玄…徳水……玄徳…様…お,おー,OK,OK!玄 徳水だな。この名前でユーザー登録をするぜ」
 ヘルプは珍しい玄の名前に驚いたのか一瞬の間の後,勢いよく手に持ったメモ帳に筆を走らせる。
 実際にメモ帳に何かが書き込まれている訳ではなさそうだが,登録の作業をしている最中だということを分かり易くする為なのだろう。
「OK。完了だぜ,玄。おっとそれとも君主様の方がいいかい?」
 メモ帳と筆を虚空に投げ込んだヘルプに玄は首を振る。
「玄でいいよ。まだどんなゲームかもわからないし,そう呼んで欲しくなったらお願いするよ」
「HA-HA!いい心がけだぜ玄。じゃあ早速このゲームの説明をしようじゃないか」
 玄は端末を手にしたまま頷く。
「このゲーム。つまり『三国志~武幽電~』は現在限定百本の試作体験版のソフトだ。OK?」
 いつの間にか黒縁めがねをかけて手にぶあつい本を持ったヘルプが玄の顔を見上げる。「お,おーけい…」
 ぎこちない玄の返答に頷いたヘルプはうろうろと歩きながら続ける。
「このソフトには守秘義務がある。なるべく他人には話さない様にと言ったレベルのものだがね。OK?」
 不審に思いながらも頷く。
「では話そう。このソフトには一本に付き一人…うーん一体?とにかく一種類の武将が封じられている」
「封じられている?そういう設定なのか?」
「NOn!NOn!そうじゃない。本物の三国時代の英雄の霊が封じられているんだ」
「はぁっ?……あー!OK,OK。分かった。それで?」
 玄はあくまでそういうことにしたいのがメーカーの希望だろうと思い,納得したふりをして先を促す。
 その様子に大げさに溜息をついたヘルプはそれでも先を続ける。
「OK。信じる信じないは玄の自由さ。但しおれっちはもう少し頭を柔軟にすることを勧めるがね。まっ説明を続けよう」
 視線を手に持った本に戻してヘルプはずり落ちためがねを直す。
「っとどこまで説明したかな…あぁそうそう,だから百本で百人の英雄たちがこのソフトに封じられていることになる。この百人を全て倒すか支配下におく。もしくは自分を含めて三名までの同盟者で同じ事をすればゲームクリアということになる」
 そこまで言ってヘルプは右手に細長い棒を持つと何もない空間を叩いた。
 するとそこには黒板の様に大きなボードが現れ,何かの数字を並べている。
「ふむ…既に多少の変動があるみたいだな。これが全体のステータス画面。この左上の数字…九二。これがユーザー登録済みで君主のいる武将達の数だ。その下の赤く三とあるのはまだユーザー登録されていないものだ。そこら中探し回れば購入出来るかもしれないぜ。まあ無理だろうけどな。そしてこの数を最初の数に足すと九五,百に五足りない。つまり,もう他の誰かに五人負けてしまったってーことさ」
「負けたらどうなるの?」
「負けたら…か?」
 玄のもっともな問にヘルプはステータス画面を消すと虚空からドクロマークの爆弾を取りだして導火線に火をつけた。そしてその導火線は瞬く間に短くなり…
 ボンッ!
 小さな爆発音と共に煙を出して爆発した。
「…ゲームオーバーさ」
 煙の向こうで煤だらけになって頭の一部を欠けさせたヘルプが握った手を上に向けて開いた。
「ゲームオーバーって?」
「今後このソフトを入れて電源を入れてもソフトを使うことは出来ない。封じられてた武将の霊がいなくなっちゃうんだから当然のことだな」
 うんうんと頷くヘルプだがそれを聞いた玄の方はそうはいかない。
「ちょ,ちょっと待ってくれよ。そしたら最初にいきなり負けたらそれっきりこのソフトはゴミ同然ってことかよ!」
「OH--玄!君は何て的はずれな事を……ゴミ同然だなんて事があるわけないじゃないか」
「な,なんだよ。びっくりさせて…そうだよな。一回ゲームオーバーになったら二度と出来ないなんて聞いたことないもんな」

・・・・・・・

「ゴミ同然なんかじゃなくゴミなんだよ」

 ヘルプの言葉に胸を撫で下ろそうとした玄の動きが凍る。
「もう使えないから中古ショップに売ることも出来ないし,そもそも非公式のものだから売りに行っても買い取ってくれるはずがないさ。ならば負ける前に誰かに売ってしまえと思ったところでユーザー登録をしてしまった以上は玄以外にこのソフトを使える者はいない。ほら,負けたらゴミだろ?」
「…………」
「まっ,負けなきゃいいんだからそう落ち込むなって玄。おれっち的には兎にも角にもまず,玄が誰の君主になったのかを確認するべきだと思うぜい」
 ヘルプは固まったままの玄の前で何もない空間から自分の欠片を拾い集めてくっつけている。
「………………………………………」
「返事がないってのは肯定って事だから,玄の武将を解放しちまえ!実はこればっかりはおれっちも解放してからじゃないと誰が入ってんのかわかんねんだよね。さてと」
「ちょ!ちょっと待てって!」
 明らかに好奇心たっぷりで手続を進めようとするヘルプを慌てて止めようとつい,いつもの癖で2ボタンを連打してしまう。
 VS端末において2ボタンというのは過去のゲーム機でいうキャンセルボタンの位置と同じだったからである。
 するとそれまで自由奔放に振る舞っていたヘルプの動きが止まった。
 無論今も勝手に動こうとはしているのだが2ボタンを押してる間だけは思い通りに動けないようだ。
「NOoooooo!なにすんじゃぁぁぁ」「…なるほど。あまりにナチュラルに動くから忘れそうだったがゲームには違いないからな。プレイヤーの操作には従ってくれるってわけか」
 玄は確認するように2ボタンを押したり離したり,スタートボタンを押して完全に一時停止させたりして一人満足げに頷く。
「お,おい・・・玄・・・も,もう,や,やめろ・・・・身体がもたん・・・」
 何故か息も絶え絶えなヘルプの懇願に玄は苦笑を浮かべつつも操作をやめる。
「ふうー…全くこっちの身にもなれっちゅうねん!んじゃ武将呼ぶぞ」
「だから待てっていうのに…」
 玄は深い溜息をつきながら再び2ボタンを押す。
「な,んで,止め,んの,や!」
 ヘルプの抗議に玄は2ボタンを押しながら答える。
「このゲームは負けたらそれで終わり。それはもうどうしようもない事なんだろ?」
「当た,り前や,っちゅー,ねん!」
「なんで関西弁風やねん…ってそんなのどうでもいいんだけどね。負けたら終わりって事はつまんないことでゲームオーバーにはなりたくない。ヘルプの言う武将を…何?解放?解放しなければまだゲームは始まらない。そうだよね」
 ヘルプが話を聞く気になったらしい事を察した玄は2ボタンを離す。
「まぁ…そうだな」
「何回もやり直したりして慣れる余裕がない以上,机上の空論でも何でも構わないから一通りゲームのルールと対策を練ってからスタートするのが当たり前だろ」
「ほう…なかなかわかってるな玄!確かに何も知らないで戦うのは裸で戦場に出るようなもんだ」
 ヘルプが感心して何度も頷いている。
「まあね,鎧とまでは言わないけどせめて服くらいは着て戦場に行きたいしね。剣は俺の武将がなってくれる。そういうことだろ」
 玄が何気なく言った一言にヘルプの表情?が変わる。
「ふん,気に入ったぜ玄!おまえさんが納得のいくまで説明してやるぜ!任せときな!」 
 威勢良く叫んで虚空からなぜかバットを取り出し振り回すヘルプを見ながら玄はぼそりと呟く。
「もともとそれがお前の仕事だろ」
 バットを振り切った状態で硬直したヘルプの手からゆっくりとバットが落ちていった。 

                                          1の章(完)
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

[ 2008/01/27 12:48 ]

| 小説(ライトノベル) | コメント(3) | トラックバック(0) |
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コメント
--- 文才っΣ ---

すごいですよおお
続き気になりますw
詩音 * URL [編集] [ 2008/01/27 23:08 ]
--- ---

一気に読んじゃいましたよ!ww
続きが凄い気になります・・・(>_<)
咲夜 * URL [編集] [ 2008/01/28 19:20 ]
--- ---

>詩音さん
ありがとうございます^^
また続きを載せますので楽しみにしてくださるとうれしいです^^

>咲夜さん
ふふふ・・・
な~んてそんなにたいそうなものにはならないと思いますがw
また載せますので^^

お二人、読んでくださってありがとうございました♪
こうして読んでくださる方がいるなら少しずつでも続きを書いていこうかなって気持ちになりそうです^^
まぁ時間もないし、なかなか進まないとは思いますが^^;
是非力尽きるまでお付き合いください^^
* URL [編集] [ 2008/01/29 23:48 ]
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