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立て続けに連載3回目。
立て続けにいきますよ^^

コメントもほとんどつかない、寒い企画ですがw

今回は第2章の後編です。

では読みたい方は続きからどうぞ~
 第2章 美髯公(後編)


関羽は字を雲長といい,三国時代の蜀の国を興した劉備玄徳と若き頃知り合いその志に傾倒して桃の花咲き乱れる下で

『生まれし月日は違えども死すときは同年同月同日に死せん』

と義兄弟の契りを結んだ。
 有名な桃園の誓いである。
 長兄を劉備として次兄関羽,そしてこの時末弟としてもう一人,張飛という豪傑がいた。
 この三人の誓いは結局果たされることはなかったが身一つで漢帝国のために旅立った三人は当初自分の土地すら持たずひたすら各地を放浪し誰かの庇護を受けるしかないような苦しい道行きの中でも義兄弟としての絆は固く裏切りや寝返りが横行する戦乱の世に決して二心を抱くことなく蜀の国を興し,漢を復興するために邁進した。
 関羽は張飛と二人,類い希なる武勇で全土に名を轟かせたばかりでなく,礼の人,義の人として人々に知られ現在でも中国では関帝聖君という神様として祀られている。
 またその胸元まで伸ばした顎髭の美しい事から美髯公と呼ばれることもある。
 三国志を語る上で欠かせない有名な人物である。

 話は結局深夜にまで及んだ。
 玄自体が詳しい事情を知らなかったことと現代の用語を関羽が当然理解できなかった為に噛み砕いて説明するのに手間取ったせいだが,さらに関羽は自分が死んだ後の蜀のゆく末を聞きたがった。
 玄はあくまでも後世に残された資料の下に自分が得た知識だと前置きをして関羽の死後の三国時代を語って聞かせた。
 現代に残る三国志には大別して二つの系統がある。三国志の正史と三国志の演義である。 正史は国家が編纂するため,この時代、最終的に中国を統一したのは魏であり,魏を乗っ取った晋であったから魏の国の人物が中心に綴られた。
 一方演義では民衆に噛み砕いて分かり易く伝えるために綴られるものであり,三国志の演義では民に善政を行ったとされる徳の人,劉備を主役とした話となっている。
 両者は大筋は変わらないもののその人物像などには顕著な違いが見られる。現代でも一般的には三国志演義の方が人気があり,普及している。
 玄も演義の方が好きであったし関羽は蜀の人物なのだからともっぱら演義の話に基づいて語った。
 要約するとこうだ。
 
 三国時代が訪れ,一国を攻めれば残った国に背後を襲われてしまうという関係が危うい均衡を保っていた頃。
 土地を守る武将としても民を治める領主としても優れた能力を発揮していた関羽は三国の交わる中央の肥沃な地域,ケイ州を治めていた。
 主とする劉備は漢帝国を守ることを目指していたが中国の北半分を領地とし,漢の帝を傀儡として立て国政を牛耳っていたのは魏の国を興した曹操であった。
 蜀は中国の南西の四分の一程度の国土しか無い国であったがその周囲は険しい山などに囲まれ天然の城塞であったから,その国土を守る事は難しくはなかった。
 しかし,漢の帝室の血筋にあたる劉備はそれを良しとはしなかったのである。
 中国の南東四分の一を国土としていた呉を窺いながらも魏の国を攻めた。
 蜀の国と,ケイ州からの二面作戦である。
 さすがに関羽は歴戦の強者。長い戦乱で戦上手でもあった。なみいる魏の猛将や自軍に倍する様な大軍に一歩も引かず魏の国へと攻め上っていった。
 一方で,ケイ州は呉の国にとっても要地であったからいつでも隙を窺っていることを関羽は知っていた。
 その為,自分が離れていたとしても有事にはすぐに連絡が届くように数里おきに烽火台を設けていたのだが呉の国は烽火台を一つ一つ籠絡し,関羽への連絡を断った上でケイ州を奪ったのである。
 関羽にとってケイ州は義兄より預かった大切な土地であったから魏の軍に追撃を受けることも構わずケイ州へととって返し呉の軍を追い払おうとしたが待ち構えていた呉軍に疲れ果てた関羽の軍は対抗できずに敗走を余儀なくされる。
 それでもどんどん減っていく兵士を慰撫しながら善戦するがとうとう麦城という廃城にわずかな兵士と共に押し込められ包囲されてしまう。
 討ち死に覚悟で討って出ようとする関羽を押しとどめた腹心の周倉らの勧めに従いわずかな兵と共に包囲を突破して蜀への帰還を謀るも呉の策にはまり捕らえられ,養子の関平と共に首を斬られた。
 ここまでが生前の関羽の覚えているところであった。
 その後,関羽の死を知った劉備は嘆き悲しみ,激怒した。
 すぐさま呉を滅ぼさんとする劉備の怒りは思いとどまるようにと諫める稀代の天才軍師諸葛亮をもってしても止めることが容易ではなかった。
 それ以上に激怒していたのが末弟の張飛であった。一度は諸葛亮の諫めに従い戦を思いとどまろうとした劉備を説き伏せ開戦に踏み切らせるや否や,自分も戦支度にかかったが義兄である関羽の弔い合戦だと配下に無茶な注文を繰り返し,出来なければ殺すと脅迫まがいの命令をしたため命を惜しんだ配下に開戦間際に寝首をかかれて落命してしまう。
 それを知った劉備はもはや怒りを通り越してひたすら落胆するしかなかった。
 自分よりも遙かに強かった二人の弟を失い,嘆き悲しみながらも,それでも呉への戦だけはやめる訳にはいかなかった。
 漢帝国のために常に行動してきた劉備が初めてそれを忘れたのがこの時だったのかもしれない。
 蜀の留守を諸葛亮に任せ,自ら大軍を率いて出陣した劉備は序盤は勢いに任せ次々と呉軍をうち破っていくも一つの敗戦から次々と後退を余儀なくされ,やがて陣中において病に倒れる。
 そして,病は癒えることなく劉備は戦の最中に白帝城というところでその生涯を終えることになる。
 死の間際に蜀の都,成都より諸葛亮を呼び寄せ後事を託して…
 劉備の死後,諸葛亮は劉備の子の劉禅をよく補佐し何度も魏を追い詰めるが国力で大きく劣る蜀では長期の戦に耐えられず大国となった魏を滅ぼすことは出来なかった。
 やがてその諸葛亮が幾度目かの遠征の途中で病没すると蜀に残された武将達に有能な者は少なく,姜維等の一部の武将が必死に劉備や諸葛亮の遺志を継ぐべく力を尽くすも蜀の要害を切り開いて越えたわずかな魏軍に劉禅は戦う意思も見せずに降伏し,蜀の国は滅びてしまったのだった。

 自分の知っていることを全て話し終えた玄が静かに関羽を見上げたとき,関羽は立ったまま目を閉じ佇んでいた。
 玄は泣いているのだと思った。その姿のどこにも片鱗は無いが今の話を聞けば関羽が死んだことから蜀の衰退が始まっていったように感じたはずだ。
 事実その通りである部分は少なくない。関羽自身が思っている以上に劉備達との義兄弟の絆が強かったのだ。国の方針をねじ曲げ我が身を危うくしても惜しくないと思う程に。
 おそらく関羽の胸中では様々な後悔と残された者達の苦労と心中を思い,自分のふがいなさに激しい怒りを感じているのだろう。
 玄は何も言わずに待っていた。自分の知っていることは全て伝えた。
 それをどう受け止め,どう感じるかは本人が決めることで玄が横から口を出すことでは無いからだ。
「………おぬしの言うこと。おそらく大きくは間違ってはいないだろう。死んでからの記憶は恐ろしく曖昧で何一つ確たる事は思い出せんが,おぬしの話には私を納得させるものがある。覚えてないだけで私はそれを知っていたのかもしれん…」
 玄はそれに関しては何も言わない。関羽も答えて欲しい訳ではないのだろう。だから玄はこれからのことを聞いた。
「…俺の知っていることはそのくらいだし,現状はさっき話したとおり。負けたらあなたがどうなるのかもわからないし,例え最後まで勝ち残ったとしてもそれが良いことなのか悪いことなのかも分からない。その上でまずあなたの意思を確認したい。この作られた舞台に乗るか,それとも…」
「…確か,三日間は戦場に出なくとも消去される事はないのだったな」
 玄は頷く。
 現在関羽は『待機中』という扱いになっている。この状態からホストコンピューターの構成しているフィールドにアクセスしてそこで行動をし,他のプレイヤーの武将と出会ったりすれば話し合いや戦闘という流れになっていく。
 待機時間は最長で三日,フィールドに出れば出ていた時間に応じて増えていく。
 待機時間を超えてもフィールドに出ない場合,その武将は消去される。つまりゲームオーバーということだ。
「一人の武人としてどんな戦いだろうと逃げる事などできん。しかし,己の力量を知らずに戦うことほど愚かなことも出来ない。今の自分が以前とどう違うのか,どれほど動けるのかを確認するまでは戦はしない」
 玄も先程ヘルプに対して同じような理由から徹底的にルールを学んだ。
 戦場では自分自身を甘やかす事は即,死につながる。まず何よりも己を知り,何が出来て何が出来ないのかそして何をすればいいのかを厳しく判断しなければならない。
 玄は当然の事だと思い頷く。
「私がこうしてここにいるということは兄者や張飛などにも会えるかもしれん。このような身になりはしたが今一度会いたいと思う。それまでは負ける訳にはいかん」
 現代に生きる玄には関羽が想う義兄弟の契りがどれほど重いものなのかは想像もつかない。戦乱の中で生と死の中を駆け抜けて築いた絆だからと頭で納得することは出来るがそのことの本当の意味など分かるはずもない。
「…わかった。ヘルプ!」
 関羽の決意を聞いた玄はおもむろに端末へ向かってヘルプを呼ぶ。
 すると端末の画面から今度は煙が立ち上って(もちろん映像の筈だ)その中からヘルプが現れた。
 しかし今度は麻雀牌の真ん中に大きな円の模様,それを鼻に見立ててその両斜め上に小さな●があり,その下には棒が一本引いてある。やはり麻雀牌の牌の一つである。
「……今度は『一筒』か」
「YOHO!元気にしてっか!玄」
 相変わらず無駄にテンションの高いヘルプはまた両手足を出してくねくねと踊り続けている。
「それにしても関羽とはね!おめえさんも運がいいぜ。これで上位入賞は決まったみたいなもんじゃねぇか。どんなぼんくらプレイヤーでもそうは負けねぇだろうさ。あっ,さっき消えちまったのは別にわざとじゃねえぜ。制作者の意向でな最初の登場シーンぐらいは邪魔者なしで見せてやろうじゃんってことになってんのさ。泣かせる心遣いってやつ?」
 玄は一向に落ち着く気配のないヘルプに溜息をつくと躊躇いなく2ボタンを押した。
「ぐっ!…てめっ…ま……た」
「話を聞く気になったか?」
「……はい」
 大人しく頷いたのを確認して2ボタンを離すとヘルプは恨めしそうに玄を見つめるが玄は構わず用件を切り出す。
「ヘルプ,仮にも戦いのゲームなんだから当然素手で殴り合う訳じゃないよな。武器はどうなってるんだ」
 玄は関羽がこれから実戦の動きを確認するにあたり,より実戦に近く武器を持ってもらうのがいいと判断した。
 しかし,関羽の身につけてる物の中で武器らしい物は何もない。
「OH!さすがだな玄。一応聞かれなきゃ答えない手続なんでな言ってなかったんだが,最初に使える武器は五種類。どれも下っ端兵士が持つようななまくらだが条件はみんな一緒だから我慢してくれ。剣が一振り,これは全武将の標準装備だ。切れ味はともかく折れることはないし紛失しても待機モードになれば戻ってくる」
 ヘルプが虚空に細身の剣を取りだして浮かべる。
「後は弓,大刀,小柄,槍。この四種類から一つ選んでもらうことになる。
 弓は飛び道具で矢が十本,小柄は投擲用の小さな刃でやはり十本。これらも待機モードになれば元に戻る。但し弓を壊された場合は直らない。ただし,自分で直せば別。大刀,これは剣よりも大きくて重い。その分切れ味も威力もある。槍,これは言うまでもないな。間合いの長さが特徴だ。なまくらだからそんなに丈夫じゃないがね」
 ヘルプは一つ一つ説明しながら虚空にその武器を並べていった。
 最後まで説明を聞いた玄は関羽を見た。
 関羽は玄の視線を受けて頷くとまず剣を手に取った。
 軽く一振り…
 『ひゅん』という小気味良い音と共に振られた剣は玄の目でははっきりと捉える事が出来なかった。
「……疾い……」
「軽すぎるな…もう少し重いのはないのか」
 ヘルプは関羽の問に首をすくめる。
「悪いが,その剣は共通なんでね。変更はできない」
 関羽は頷くとその剣を鞘に入れ腰に差し,残りの四つの武器を一つずつ手に取って確認していく。
 矢を放ち,小柄を投げ,大刀を振り,槍を突いた。
 その動きのどれもが玄の予想を遙かに上回る速度で正確に行われている。
「確かになまくらだな。私の青竜偃月刀がないのが口惜しいな。こちらの武器も重さや長さの違う物はないのか?」
 偃月刀は日本の薙刀に似た武器で柄が長くその先に刃がついている。関羽の愛用していた青竜偃月刀は重さが八十斤(約四八キロ)を超えたと言われている。
「弓と槍だけは体格に合わせなきゃならないからな。それを選ぶ時には多少は変えられるぜ」
「ふむ…ではこの槍のもう少し長くて柄の太い物をもらおうか。これでは短すぎるし,柄が細すぎて我の手が余ってしまうからな」
 確かに玄程度の体格ならば,今関羽が持っている槍で充分だがおそらく二百センチ近い身長と玄の二倍はあろうかという肩幅から考えればあまりにも貧相に見える。
「まっ,そんくらいは仕方ねえやな。ちょっくらそんまま持っててくんな」
 ヘルプは関羽の持つ槍に向かって軽く指を鳴らす。
 すると槍がモザイクのように分解される。それも一瞬の事で再び元のように関羽の手に戻った時には関羽の要望どおりの形の槍になっていた。
 おそらくデータを書き換えたのだろう。
「ふん……あやしい生物が怪しげな術を使うか」
 関羽は目の前に現れたヘルプにも,手の中でおこった不可思議な現象にもまるっきり動揺せず手の中の槍を軽々と片手で振り回している。
「穂先は変えられんのだな?」
「無理」
「先程,弓が壊れたときに直すのは構わないと言ったな?」
「言った」
「そこで問うが麻縄と膠(にかわ)を濃くして粘着力を増した物を用意できるか?」
「……」
「おぬしから貰えないのであれば探すしかないがこの状態のまま自力でこの先見つける事は可能か?」
 ぽんぽんと質問され,自分のペースで話せないことが気にくわないのか淡々と答えていたヘルプもさすがに首をかしげた。
「自力では……無理だと思うぜ。そんなものこのゲームじゃ使わねぇし。確かにフィールドに出れば木があるし,獣もいる。だがあくまでもデータの上でだ。罠をかけたりするのに草木は燃えるし,穴も掘れる。だが草木を切っても樹液は出ないし,獣を殺すことは出来ても食べることは出来ない。
 霊は腹なんか空かないからな,危機を回避するために殺すことは出来てもそこより先は設定されてないのさ。縄を作ることは出来るだろう,罠を組んだりするのに使うかも知れないからな。ただ膠の方は獣や魚の骨や皮から煮詰めて作る物だからな多分無理だ。何に使うのか知らねぇけどよ」
「ヘルプ。もしお前の権限で用意出来て,それが規則に反しないなら出してあげてくれないか」
 玄は関羽が何をするつもりなのかは全く分からなかったが関羽の言葉は迷いのない自信に裏付けされているように思えたし,冷静な話しぶりも今まで玄が抱いていた名将のイメージに重なる。
 その関羽が必要だと言う。出来れば何の憂いもなく万全の状態で戦わせてあげたい。
 それが玄の思いである。
「うーん…まあ確かに武器になるようなもんじゃないしな。でも接着剤だってうまくすりゃ罠の道具になるからな…その手の物は自作するのが原則なんだ。だが玄がそう言うんじゃ仕方ねぇ。但し!罠への転用が出来ないように設定させてもらうし,量も多くは出さない。麻縄は三尺(約一メートル),膠はどんぶり一杯ってところだ」
 ヘルプはそう言うなりその通りの物をその場に用意する。膠の入ったどんぶりがラーメンどんぶりなのは愛嬌のつもりだろう。
「充分だ」
 関羽はそう言うと麻縄を手に取り一度ほぐした後さらに細く,強靱により合わせていく。そうして二倍程の長さになった縄を膠に浸ける。
 それを腰の剣の柄から剣身の下半分ぐらいまで巻くと,今度は槍の穂先とは逆の端に剣身の先の半分が出るように重ねて槍の柄と剣を一緒に縄できつく巻きつけていく。
 膠が滲み出し,ぽたぽたと垂れるがもちろん玄の部屋の床には影響はない。
 完全に槍と剣が一体になるように縄を巻くと残った膠を丹念に縄の上から塗りつけていく。
 そこまで実に淀みなく作業を進める様を玄もヘルプも感心しながら眺めていた。
 関羽はそんな二人の存在など無いかのように集中して作業を進めた。
 やがて小さく頷くと槍を持って立ち上がり槍を軽く振る。剣の飛び出た方を穂先としているようだ。
「即席の…薙刀みたいなものか」
 玄が感心して頷く。
「弓を直して良いということは武器の改良も裁量の範囲ということであろう。文句はあるまい」
 関羽が重さも長さもまずまず自分好みに近づいた武器を確かめるように振り回しながらにやりと笑う。
「確かにな…文句はない。しかしよく思いついたもんだ。その剣は共通の備品で絶対に折れねえ。接合部分が外れて落としたところで待機に戻れば帰ってくるしな」
 関羽にしてみればそんなことを考えていた訳では無いだろう。
 自分の力と速さを活かすためにはある程度の間合いで使える『切る』武器が必要だっただけだ。
 愛用の青竜偃月刀に近い使い方が出来る方が早く勘も戻る。
「しばらく勘を取り戻すために訓練をする。明日の夜にはめどがついているはずだ」
「わかった。明日,訓練の結果次第で出陣するかどうか決めよう。ヘルプ,電源を切っても関羽は訓練できるか」
「電源を切っちゃうと駄目だな。どうせ電池なんかなくても動くんだからつけっぱなしにしとけよ。映像だけ端末の画面に映しておけばいいさ」
 ヘルプの勧めに従い,メニュー画面を呼び出して関羽を画面に移すと端末をそっと机に置いた。画面では関羽が華麗に武器を扱っている様が見える。
 玄は端末から視線を外してベッドに戻ると枕元の時計を見る。そしてベッドの上に身を投げ出して天井を見上げる。
「深夜三時七分…」
 いつの間にか深夜になっていた。なにやら流れに押し流されるままに順応しつつあったがこうして一人静かになって思い返してみるとどう考えてもゲームの域を超えている。
「…恐くなったか?」
 声がして視線を向けると端末の上にヘルプがいる。
「なんだまだいたのか。もう消えていいよ。また何かあったら呼ぶから」
「恐くなったのか………」
 ヘルプは玄の言葉を無視して繰り返す。
「なんだよ偉そうに……」
 ヘルプの真面目なしゃべり方に思わず苦笑して視線をヘルプへと向ける。
 そこにはいつもと雰囲気の違うヘルプがいる。
「…そうじゃない。そうじゃないんだ…だけど……何か,何かが納得いかない」
 頑ななヘルプの雰囲気に思わず玄も真剣に答える。
「これはゲームだと言っても?」
「俺はもうゲームとは思えない。少なくともテレビゲームの範囲は逸脱してる。むしろスポーツや鬼ごっこみたいな人間同士がやるゲームに近い。しかも人格を無視された強制参加が百人もいる」
 玄は天井に視線を戻して答える。
「どうしたいんだ?」
「どうしたいんだろうな……」
「取り敢えずは?」
「関羽を劉備と張飛に会わせてやりたい。参加させられてるんだろ」
「多分……な」
「とにかく俺にもゆっくり考える時間と心の整理が必要だよ。未だにどこか信じられない気分なのにあった事は現実として受け入れてる。自分がこんなにありのままを受け入れられる人間だとは思わなかったよ」
「……………」
「一人にしてくれないか」
 そう言って端末に目を戻したときにはヘルプの姿はもうなかった。

 明日は第二土曜日にあたり学校は休みだから時間はたくさんある。
 取り敢えずは『芸夢』へ行っておじさんに話を聞いてもらおう。
 おじさんに話すなら守秘義務とやらの範囲内だろうし。
 そう決めるとすっと肩の力が抜け,玄は瞬く間に眠りへと落ちていった。

                        第2章 完
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[ 2008/02/04 23:43 ]

| 小説(ライトノベル) | コメント(2) | トラックバック(0) |
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コメント
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遅くなりましたが今回も読ませていただきましたよw
多分、自分以外にも読んでいらっしゃる方はいると思うのですけど
コメントをつけるのは遠慮しているという感じなのですかねw

いよいよ、ゲームが始まるといった感じですね・・・
どのようなことが待ち受けているのかとても楽しみです^^
咲夜 * URL [編集] [ 2008/02/08 21:39 ]
--- ---

>咲夜さん
コメントありがとうございます~^^
こうしてコメントくれるの咲夜さんだけっすよ~(T T)

うれしいですw
本当に他にも読者いるのかな・・・
たくさん感想くれた方がモチベあがるんだけど、感想を書かないというのもひとつの感想だと思うんですよね・・・^^;
強制するわけにもいかないし、難しいところですw
* URL [編集] [ 2008/02/09 00:10 ]
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