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第3章 ~後編~
では、パソコンが帰ってきましたので予告どおり第3章の後編をアップしたいと思います^^

次章からはいよいよ戦闘シーンもちょっとだけ出てきますが・・・

読者の方のここまでの感想はどんな感じなのでしょう?^^;
(まあ、読者がいればですがw)

では、後編です。

続きからどうぞ。

※カテゴリで『小説(ライトノベル)』を選べば第1章からをすべて閲覧可能です。興味のある方は是非ご一読ください^^
 店を出た後,ふらふらと自転車をこぎながら自宅方面へ走っていた玄だがそのまま自宅に帰る気にはなれず少し方角を変え,近所の公園へと向かった。
 玄の幼い頃からのお気に入りの場所で母親である恵と玄の公園デビューの地でもある。
 さほど大きい公園ではなく,小さなジャングルジムと砂場と滑り台,ベンチが数脚と小学生がドッチボールをするのにちょうどいいぐらいのスペース。
 それがこの桜公園の全貌なのだが,その名前の示すとおりこの公園の周りは桜の木が植えられており,今の時期ならまだ桜が咲いている。
 日も暮れてくればささやかな花見を楽しむ大人達もいるかも知れないが今の時間ならば比較的静かな筈だと思ったのだ。
 案の定,公園内は数人の子供達が砂場で遊んでいるだけで静かなものであったし,開花以来の好天気に恵まれて比較的多くの花を残した桜達も少しは玄の気持ちを和らげる。
 自転車を公園内に乗り入れベンチの脇に止めるとベンチに座って空を仰ぐ。 そこには桃色の桜の向こうに広がる青い空が見える。
「いい天気だな…」
 呟いて暖かい陽射しを受けながら目を閉じる。
 自分の気持ちはどうあれ,関羽は戦いに赴くことを厭いはしない。
 そして,おそらくは余程の事がない限り負けることもない。ただし,あくまでその戦いが千八百年前の条件と一緒ならば…
 関羽達は霊体を一部デジタル化されて,プレイヤーへの服従と同時に特殊能力を与えられている。 例えば関羽ならばステータス画面を確認するとこうなる。
『関羽 体力 一〇〇
     武力 九八 
知力 七八 
技能  武器 レベル 五
     罠   レベル 二
     馬   レベル 五
     指揮 レベル 四
     術   レベル 二
     火  レベル 二
     風  レベル 一
     水  レベル 三 

必殺技  青竜斬(武),火旋撃(武)』
 体力は待機モードでは減ることはないし,待機に戻れば時間と共に最大値一〇〇まで回復する数値だがフィールドでダメージを受けたり,術や必殺技を繰り出すと減少する。
 武力と知力の最大値は原則,一〇〇まで。装備品により,その値を上回ることもある。
 これは関羽の武術の腕前と戦術面等の知能を数値化したものだ。
 技能はそのまま武将達の技術を五段階に分けて表示している。
 その内容は千差万別のようだ。
 ここまでは実際の能力を数値として表しただけなのでプレイヤー側にとっては貴重な情報だとしても関羽にとってはなんら差し支えはない。
 問題なのは術と必殺技。
 術は早く言えば魔法だ。火なら火を出すことが出来るし,風なら風を吹かすことが出来る。使い方,使いどころは使う者次第だがうまく使えば戦局をかなり有利に運べることになるだろう。
 術に向いているかどうかを術レベルが示しており,更に使える術とその個々のレベルが表示されている。
 術レベルが高ければ,術使用時の体力の消耗を低く抑えられるし,個々のレベルが高ければより強力な術が使える。
 必殺技は術との併用や力を込めた一撃で普通の攻撃よりも威力の高い攻撃を繰り出せるものでやはり,体力を消耗する。
 関羽の場合は武器を使った必殺技なので武器レベルが高い関羽は少ない体力消費で技を繰り出せるはずだ。
 文官の様な武将ならば術主体の必殺技を使うことになり,術レベルが重要視されることになる。
 この二点は関羽が生きていた時代には当然なかった能力であり,当然関羽には対策も使い方も分からないだろう。関羽一人の力はとても大きいがそういった特殊能力は得てして大を上回ることがある。
 様々なゲームをやり込んできた玄にはそのことがよくわかる。
 この戦い(ゲーム)で関羽が勝ち残る為には,そのての戦い方にゲームで精通した自分の力も役に立つはずである。
「……!………っん!玄ってば!」
 とにかく少しでも長く勝ち残ろう…
 その間に何か考えればいい。負けてしまえばきっと二度とこのことにかかわる機会は無いような気がする。
 俺に何が出来るか分からないけど,俺以外に武将達を解放してあげたいと思う人がいなかったら関羽達はいつまでもあのままかもしれないし。
「玄!玄ったら!次呼んでも無視したら殴るからね。五秒前,四,三,二,一,0。せーの,玄!」
 よし,今晩関羽と話し合おう。俺にも手伝わせてくれって。そうと決まれば重く考えるのはやめだ!とにかく優勝するまでに何か考えればいいんだから。
 きっとおじさんも協力してくれるし何とかなるさ。
 生来,楽天家の玄らしく見事に気持ちを切り替える。
「はい,ぶっぶっー」 ゴスッ!「ぶっ!!ぐえっ!な,な,ななんだ!」
 取り敢えず自分の考えをまとめて気分がすっきりした玄が気持ちよく目を開けようとしたときに激しい痛みと衝撃が額を襲った。
 更にベンチに腰掛けて上を向いていたからたまらない。一瞬だけ首が気持ち悪い位に反った。
 玄が痛みと咳で涙目になりながら額と首を押さえて目を開けると目の前にジーパンにティーシャツ,その上から白いパーカーを羽織った女が腰に手を当てて仁王立ちしている。
 玄は見知ったその人物を確認すると息を整えて口を開く。
「あ,茜か…お前なぁ,いきなり人を殴るなんてどういうつもりだ。危うく首の骨が折れるところだぞ!」

「何言ってんのよ!私は何度も何度も玄を呼んだし,答えなければ殴るって宣言して呼んだのに,それでも無視したのは玄でしょ」
 染めてるのか,それとも地毛なのか分からないが淡く茶色がかった髪をポニーテールにまとめた茜は傲然と言い返す。
「そんなの知るか!何も殴らなくたって優しく揺するとか,気づくまで隣で待つとかもっと女らしい対応の仕方があるだろ」
 全く謝るそぶりのない茜にムキになって言い返す。
「うーん…玄は私にそうして欲しい?」
 当然同じテンションの反応を予測していた玄は,ちょっと真面目な顔で問い返されて玄は思わず言葉に詰まる。
 高校に入ってから知り合った森崎 茜は一年の時同じクラスになり,自己紹介で自宅が思ったよりも近いということがわかって話すようになった。進級した今年も同じクラスになり,腐れ縁だが正直言えば結構可愛い。
 しかも,元気一杯の明るい性格とメリハリの利いたスタイルは女性としての魅力を十分に持っている。
 密かに彼女を思っている男達も少なくないはずである。いや,間違いなく多い。
 しかし,引く手数多の彼女はどんな相手から告白を受けてもOKを出したことはない。
 そんな彼女と玄は意外なことに仲がいい。
 周りから見れば恋人同士じゃないかと勘ぐられるぐらいに。
 玄は自分が一種のゲームオタクであることを隠そうとはせずむしろ公言しているから比較的良い外見の割に女子に人気がない。
 やはり女子高校生という世代にはオタクという言葉だけでその人間を低く見てしまう傾向があるらしい。
 ただ,玄はそんなことは一向に気にしない。女子に人気が無いのは寂しい事ではあるが自分の本当に好きなことを隠して生きるのはもっと寂しく虚しいと思うからだ。
 玄自体はゲーム好きとは言っても明るく社交的で,そこそこ成績も良いし,運動だって平均点以上は取れる。
 玄のオタクというレッテルを気にせずに玄に歩み寄れば玄は楽しく信頼出来る友人なのだ。
 茜はその点,偶然に感謝している。入学当時,まだ玄がゲームマニアの徳水と定義される前にただの徳水 玄として知り合ったお陰で先入観に惑わされることなく玄を知ることが出来た。
 一度,玄を知ってしまえば後からゲームオタクということが発覚しようが『それって何か彼のマイナスになるようなものなの?』ってな感じになる。
 むしろ,周りがマイナスに思うことを充分に承知しながら偽らない玄が格好良く見えてさえくる。
 今まで自分に好意を寄せてきた男の子達は確かに格好良かったり,運動神経抜群だったり,女心をくすぐるような語りをしてくれたがそのどれもがなぜか薄っぺらく見えた。
 玄ほどに何かに打ち込んで夢中になっているようには見えなかった。野球に夢中になるのもゲームに夢中になるのもさして変わりはない。
 百メートル走か,二百メートル走か位の違いしかない。どちらが上とか下とかはない。
 どれだけ真剣に取り組んでいるかが大切だと茜は思っている。
 だからと言って玄の事が好きなのかと言われると少し考えてしまう。確かに他の男の子に感じない魅力を感じているし,結構気になるし,かまってもらいたかったりする。
 玄の見てる世界を見てみたくて高い身体能力を買われて誘われた幾つもの運動部の誘いを断って学校からは非公認のゲーム同好会に玄と共に在籍しているのもそういった理由からだ。
 仲の良い友達に言わせれば…
「あんたは玄くんを好きだということを素直に認めたくないだけ。何となく惹きつけられてそうなったからスイッチが入ったことに気がついてないだけよ。特に大きなイベントっていうか,きっかけがあった訳じゃないし,玄くんも鈍いからあんたが意識するような言動は取らないでしょ。これでライバルでもいればあんたも焦って気づくんでしょうけど。
 幸いというか何というか玄くんのああいう趣味が防壁になって悪い虫は近づかない。あんたは安心していられる訳ね。
 あんたは自分が玄くんを好きだって気づくロマンティックなきっかけが来るまで気づかない振りをしていたいのよ」
 なるほど…言われてみれば思い当たる節はある。
 だけどそうはっきり言われてしまうといい気はしない。
 そう思った事が表情に出たらしく友人はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
「あたしは別にあんた達がどうなろうと構わないけどね。ただ,お節介な友人その1として一つ忠告してあげるわ…確かに悪い虫は寄ってこないけど,玄くんが寄りたくなるような花がいないとは限らないわよ。玄くんはイメージが悪いだけで外見も中身も申し分ないんだから,自分から動き出せばすぐに周りの風聞なんて間違いだって事に気づくでしょうね…後はそのお花さんがどう心境を変化させていくのか……あんたにはよく分かるんじゃないの?」
 その言葉に茜は否定的な意見を何一つ返すことが出来なかったのである。
 スイッチが入ってる事を確信することは出来なかったが自分にスイッチがあってそれがどうやら入っているのかも?ということには気づいてしまったのである。
 玄がそんな素振りを全く見せないのに自分がそんなふうに考えてることが無性に悔しく感じると同時に友人に煽られた不安も胸に燻っている。
 せっかくの休みだというのにそんなことを考えていたらむしゃくしゃしてきたのでどうせ家でゲームでもしてるだろうと思い,玄の自宅まで押し掛けたのだ。
 しかし,既に顔見知りになっている玄の母,恵に外出してると言われ,想像以上にがっかりしてしまった自分を自覚しただけだった。
 寄ってかない?と誘ってくれるのを力無く断り家に帰る途中で通りがかった公園で玄を見つけたのだが,これがまた自分でも恥ずかしくなるくらいに喜んでしまったのである。
(やばいなあ……本当にスイッチ入ってるかも。おせっかいな友人その1の舞がしたり顔であんな事言うからだ)
 そんなことを思いながら妙に早い鼓動を意識して玄に声をかけたのに何を考えてるのかまるっきり反応が無い。
 春の陽射しを受けて気持ちよさそうな玄を見てたら一人思い悩んでいた自分を思って腹が立ったのでちょっと殴ってみたのだがどうやら不評だったようだ。
「ねえ…女らしくそうして欲しい?」
「えっ?…いや……何だよ突然真面目な顔して」
 玄は真正面から見つめてくる茜にちょっと顔を赤らめる。
「自分で言ったんでしょ。ちゃんと答えて」 茜にしてみれば自分の気持ちを意識し始めてしまった今,自分が玄にどう思われてるのかが気になる。
 玄はもしかしたら,もっとおとなしげで女性らしい人が好みなのかもしれないと思ったのだ。
「ん~………いや,気にしたんなら謝るよ。決してお前が女らしく無いっていう訳じゃないし,お前がお前らしくなくなるぐらいなら無理しておしとやかになるよりもいつもみたいにがさつな方がいいと思う」
 玄は茜の質問が本気だと知るとちょっと考えた上で真面目に答える。
「何よそれ!それって私ががさつな女でおしとやかにするのは無理があるってこと?」
「げっ!ば,ばか!なにもそういう意味で言ったんじゃないって」
 玄はこめかみをひくつかせる茜に慌てて手を振って弁解する。
「…ま,まあいいわよ……別に」
 あっさりと矛先を収めた茜の心中では,玄が自分をしっかりと女として見ていてくれたこと,自分の『らしさ』を好ましく思ってくれていたことが嬉しくて仕方がない。
 そんな茜の心中は知らない玄はとにかく茜が爆発しなくてすんだことに安堵していた。
「で,どうしたんだよこんな所で」
「こんな所でって!…まぁ,こんな所でよね,でもそれを言ったら玄だってそうよ。昨日VSを手に入れて自宅でやり込んでると思って家まで行ったのに恵さんがいないって言うんだもの。珍しいこともあるなぁって帰ろうと思って歩いてたら途中で見つけたのよ。まさか公園で日向ぼっこしてるとは思わなかったからびっくりしたわよ」
「なんだ,うちに来たのか。悪かったな留守してて。母さんが中で待ってろって言わなかったか?」
 言いつつ,ベンチの自分の隣を手で払ってから座るように勧める。
「言われたけど…なんか悪いじゃない」
 玄のさりげない気遣いを嬉しく思いつつ隣に腰掛ける。
「なぁーにを言ってるんだか。へたすりゃ俺よりも母さんと仲が良いくせに。こないだ隣の家の坂本さんにも玄くんよりも親子みたいに見えるわねって言われたぞ」
「はは…だって恵さんってすっごい親しみやすいんだもん。甘えられるお姉さんみたいな感じかな」
「まあ,いいけど…そんで俺に何の用事だったんだ?ゲームの事なら今から家に来るか?現物がないとよくわかんないだろ」
「あぁ…ま,特に用事があった訳じゃないんだけどね。VS買ったって言うし,どんなものなのか見せてもらおうかなと思って」
 茜にしてみれば玄に会うのが目的だったのだからこうしているだけで既に目的は達成しているのだが。
「あー…………VSね……」
 まさに,玄の悩みの核心をつく内容に玄の表情が曇る。自分の中で整理をつけたつもりだがだからといって誰彼構わず言いふらす訳にもいかない。
「何?評判倒れだった?」
「えっ……そんなことは…ない,けど」
「えー,玄が手放しで誉めないんじゃたいしたことないって事でしょ。がっかりだな,せっかく私もVS買ったのに…」
 残念がる茜の言葉に玄が目を見開く。
「マジで!どうやって買ったんだよ,予約したって簡単に買えるような物じゃないのに」
「だって,私のお父さんてば大型電気店の支店長でしょ。忙しくて家にほとんどいないせいか可愛い娘に甘くて…ちょっとおねだりしたら簡単にキープしてくれちゃったのよね」
 茜は柔らかそうなポニーテールを揺らしながらころころと自慢げに笑う。
「くっそー!お前わざとそんな憎らしい笑い方してるだろ」
「わかる?」
「わかるわ!っとに…だったら俺に感想聞かなくたって面白いかどうかわかるだろうに」
 ちょっとふてくされ気味に呟く玄を微笑みながら眺めて茜が首を振る。
「ところが,私まだソフト持ってないのよね。昨日発売のソフトってRPGとギャルゲーだったでしょ」
 玄は頷く。
「私がギャルゲーやっても仕方ないし,RPGの方は予約客の分しか仕入れなかったみたいで手に入らなかったのよね。まあそれでも頼めば何とかなったと思うんだけど端末の方で正直,無理を言った自覚があったし,RPGはあんまり好みじゃないしね。取り敢えず端末だけ手元にあればソフトは何とかなるでしょ」
 端末は出荷数が厳しく制限されているから簡単には手に入らないがソフトならば店頭で取り寄せ予約をすれば比較的容易に入手できるはずだから茜の取った行動は理にかなっている。
「お前はシュミレーション系が好きだったもんな」
「ま,ね。私がゲーム始めたときに玄の好きなゲームを借りたら三国志のシュミレーションゲームばっかり持ってきたせいでね」
「でも,面白かっただろ?」
「確かにね…でも私の場合,三国志の英雄がどうこうって事じゃなくて自分の国をいかに創るかを考えるのが楽しいんだけどね」
 玄は茜の言葉に大げさに溜息をつく。
「馬っ鹿だなぁ…それにしたって優秀な人材がいなきゃ内政の効果だって効率よく上がらないし,国を守る武将がいなきゃ外敵から国も民も守れないんだって。それにな」
「はいはい,もういいから。玄のその話は聞き飽きました。英雄達の生き方を感じろって言うんでしょ」

 もう何度も聞かされた玄の話を冷たく打ち切った茜は改めて玄の顔を見る。
「それで,どうなの?VSは」「う………ん。…実は俺も金がなくてソフトが買えてないんだよな。この間二人で内緒でやってたバイトの残りの給料が二週間後に入るだろ。それを貰ってから…かな」
 結局,玄は『三国志~武幽電~』のことを隠した。
「なに?じゃあ玄もまだ体験してないんだ」
 茜が拍子抜けしたのか玄の顔から視線を逸らしてベンチに身体を預ける。
「ちょっと意外ね。玄のことだから『芸夢』のおじさんに無理言ってでも手に入れてると思ったのに…」
 玄は昨日の様子を見ていたかの様な茜の発言に思わずぎくりと身を強ばらせる。
「…その様子だとやっぱりやったみたいね。まっでもあの人,妙に真面目だから頼んでも断られちゃったってところかな?」
「………」
 玄が何も言い返せずに黙り込んでいると茜が笑って玄の肩を叩く。
「まあまあ,そんなに落ち込まないでよ。もしかしてこんなところで日向ぼっこしてたのもそれが原因?」
「…ほっとけ」
 考えてみれば玄にとって茜が勝手に勘違いしてくれるのは都合がいい。あのソフトのことを除けば全くその通りでもあるし行動がよまれていることに対しては若干悔しい部分はあるがあえて訂正することもないと曖昧な返事をした。
「バイト代は二週間先だから,きっと私の方が先にVSデビューね」
「へぇ,何を買う予定なんだ?」
 玄もVSの普通のゲームには多大な関心があるので興味津々で尋ねる。
「わかんない」
「なんだそりゃ」
 あっさりと答える茜に肩すかしを食らった玄は顔をしかめる。
「だって仕方ないじゃない。うちの父上様がとにかくなんか出来る物を探してきてくれるって言ってただけなんだから。だからもしかしたら,店頭で流したりするサンプルデモとかサンプルプレイとか何かの体験版とか,もしかして手に入れば例のRPGかもしれないってこと」
「へぇ,いいなぁ,お前のとこは。いいコネだもんな。まさか代金まで払ってないってことはないのか?」
「何言ってんのよ。さすがに私もそこまで甘える訳にはいきません。もともと貯金はしっかりしてたからね。その位は持ってるし,この間のバイト代もあるしね」
 この二ヶ月ほど,玄は茜と共に近所のコンビニエンスストアで平日の十九時から二三時までバイトをしていた。
 当初,玄は一人で始めたのだがたまたま買い物に来た茜の母親が玄の働く姿を見て感動し,娘にも働いて収入を得る苦労と喜びを教えようと玄と同じコンビニに同じ時間帯で働く様に勧めたらしい。
 なんでも大事な一人娘を一人で働かせるのは不安だが玄くんが一緒にいてくれるなら安心して外に出せる。そういうことだったらしい。
 子供同士が知り合いになって何度か顔を合わせるうちにいつの間にか家族ぐるみの付き合いになっているため,そこそこ信用されているようである。
 幸い場所も近所だし,自宅同士も近いので一応玄が送り迎えをしながら二ヶ月バイトを続けたのである。
 それも今は目標額に達したことと学校でバイトが禁止されているためにばれないうちにということで二日前に辞めている。
 玄は稼ぐ為にやむなく始めたバイトだったが茜は働くことが楽しかったらしく終始ご機嫌で働いていた。
「どうせ俺はある金,全部ゲームにつぎ込むオタクですから貯金なんてないですけどね」
 皮肉ってはいるが,オタクだということに引け目を感じていない玄の言葉には嫌味はない。
「またまたそういうことを言う。だったらバイト続ければいいじゃない。店長さんもやめて欲しくないみたいだったし,続けてお金貯めておけば次に欲しい物が出来たときに苦労しなくて済むわよ。私はもっと続けたかったんだけど…ほら,玄がいないと…」
 茜はやや頬を赤らめながら上目遣いで玄を見て思わせぶりに言い淀む。
「あぁ,親御さんの許可が下りないもんな。お目付役兼護衛の俺がいないと心配らしいからな」
「…いや,そうじゃなくて……まぁ,それも確かにそうですから間違ってはないんだけどね…」
 茜は確かに働くことが新鮮で楽しかったが今にして思えばそれはいつもと違う玄を自分だけが近くで見ていられたから。学校が終わっても玄といられたから楽しかったのかも知れないと思い始めている。
 がっくりと肩を落としてぶつぶつと呟く茜を気味悪そうに横目で見ながら玄は立ち上がると茜のポニーテールを掴んで持ち上げる。
「ちょっ!ちょっと玄,何するのよ。痛いってば」
 慌てて立ち上がって髪の毛を取り戻した茜は玄を睨みつける。
「ほらっ!ぼさっとしてないで行くぞ」
 玄は愛車に跨り,自分の後ろを指さす。
「え?何処に?」
 茜はきょとんとして玄の自転車の後輪についた二人乗り用のステップを見つめる。
「俺んち」
「へ?」
 事情の飲み込めない茜が動かないのを見ると大きな溜息をついた玄はいいから乗れと無理矢理後ろに立たせると愛車を走らせた。
「お前さっき,うちで母さんの誘い断ったんだろ?」
 ゆっくりと自転車を走らせながら言う玄の自転車に小走りで追いつきステップの上に乗り、両手を玄の肩に乗せた。スカートで来なくて良かったと思いながら茜は頷く。
「多分,家で落ち込んでる……」
 茜は何を言われてるのか分からずに首をかしげる。
「それで家に帰ると俺が責められる。なんで家にいなかったのかって。何故かお前が来るの楽しみにしてんだよ,うちのお袋さんは。なんか娘が欲しかったらしくてさ」
「そうなの?」
 玄は溜息を吐きながら黙って頷く。
「まあ帰ったらちょっと見ててみな」
 そう言うと玄はペダルを踏む足に力を入れた。
「ただいま~」
 玄関を上がって,リビングに入って声をかけた玄に恵が待ち構えていたかのように台所から出てきて恨めしげに玄を睨む。
「玄。一体,何処行ってたの」
「ちょっとそこまで。何処でもいいじゃん」
「良くないわよ。別にあなたが何処に行っても構わないけど,あなたがいない間に茜ちゃんが来たのよ!せっかく来てくれたのにあなたがいないから帰っちゃったじゃない」
 まるで,拗ねてる子供みたいだと思いながらリビングのソファを見ると信も新聞のテレビ欄とにらめっこしながら頷いている。
 こっちもかと内心で溜息をつきながらやっぱり連れて帰って良かったと安堵した。
「ほらな」
 玄が後ろを振り返って声をかけると玄関の方からおずおずと茜が顔を出す。
「こんにちわ…さっきはどうもすいませんでした」
 玄の隣に並んでお行儀よく頭を下げる。
「まあ!茜ちゃん!いいのよ,いいのよ。さあこっちに座って。今,お茶淹れるから。こないだファッション雑誌ですっごい可愛いお洋服見つけたのよ。絶対茜ちゃんに似合うと思うの」
 今まで玄のことを睨みつけていたのが嘘のように笑顔になって茜の手を握る。
「えっ本当ですか?恵さん。見たい見たい」
 恵には既に玄のことは眼中にないらしい。
 信も新聞をたたんで二人に混ぜて欲しそうな視線を送っている。
 玄は盛大な溜息をつくと,ちらりと目が合った茜に上に行ってるから後はよろしくと合図して二階の自分の部屋へと戻った。
 部屋に戻ってVSの入った鞄をそっと机の上に置くとベッドの上に身を投げ出した。
 今夜,関羽にどうやって話を切り出そうかと考えながら寝返りを打つ。
 やると決めたからには負けたくない。
 白い天井を見上げる玄の耳に階下から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
 まさに一家団欒といった感じの階下の様子に苦笑しながら玄はいつしか眠りに落ちた。
結局,茜は一度も玄の部屋まで来ることはなく玄の家族と共に夕食を食べて帰ることになった。
「それじゃ,どうもごちそうさまでした。とってもおいしかったです。すいませんでした。長々とお邪魔してしまって」
 玄関口で礼儀正しく頭を下げる茜に恵がいいのよ,またいつでも来て頂戴ね。と笑顔で応対している。
「おーい!茜。準備いいぞ」
 暗くなってしまったために茜を家まで送って行くことになった玄は自転車に跨って門の外に待機している。
「はぁい,今行く。それじゃ失礼しますね,恵さん。あのお洋服届いたら知らせてくださいね,すぐ取りに来ますから」
「わかってるわよ。絶対似合うと思うからその時はうちで着て見せてね」
「じゃあ,恵さんも。二人でファッションショーですね。楽しみにしてますから。それじゃお休みなさい」 

茜は恵に小さく手を振ると門を開けて玄の所へ駆けてきた。
「おまたせ!」
「おー……早く乗れ」
 茜が後ろのステップに乗るのを確認する前に自転車をこぎ出す。
 茜もバイトの行き帰りはいつも二人乗りだったため慣れたもので勢いのつき始めた自転車に追いすがって身軽に飛び乗る。
「玄!安全運転で行くのよ!」
「分かってるよ!」
 背中から聞こえた恵の声に答えながら自転車をこぐ。
「結局,お前は何をしにうちまで来たんだ」
「はは…何をしに来たんでしょう?」
 背中で茜が乾いた笑いを浮かべる。
「まあ,俺は別に構わないんだけどさ。お前がうちの娘になったらうちの両親は喜ぶだろうな」
「えっ?…それって…」
 玄の何気ない一言に茜は顔を真っ赤にしてしまう。
(恵さんの娘にってことは私が玄と…それってもしかして遠回しなプ,プ,プロポー…)
「そんで,俺がお前んちの息子になれば電気店の息子になってゲーム好きのおいらは万々歳。ちょっと本気で両親を取り替えたくなるよな」
 ぐえっ!
「なんで首絞めるんだよ!危ないだろ!」
「ふん!なんとなくよ」
(もう!私が玄を好きだなんてことは絶対ないんだから!)
 茜は前で文句を言い続ける玄を無視して心でそう誓った。
「ごめんなさいね,玄くん。突然押し掛けたのに夕食まで頂いてきたみたいで」
 少しふくよかな体型の茜の母親が玄関で優しい笑顔を浮かべている。
「いえ,お構いなく。母も茜さんが来ると喜びますから」
「私達も玄くんが来てくれると楽しいんだから遠慮なく来てね。この子のバイトの時のお礼もしたいし。玄くんが毎日送り迎えしてくれたから安心して社会勉強させられて感謝してるのよ」
「気にしないでください,近所ですから。それに茜さんはしっかりしてますから俺がいなくても大丈夫だったと思いますよ」
 茜が母親の隣で一瞬顔を綻ばせるが先程の誓いを思い出して慌てて表情を引き締める。
「それじゃ,これで失礼します。お休みなさい」
「ありがとうね,玄くん。今度はうちに食べにいらっしゃい。ごちそうするから」
「ありがとうございます,おばさん。それじゃ近いうちに遊びにきます」
 玄は如才なく受け答えすると小さく頭を下げて森崎家の玄関に背を向けた。
「あっ,玄!」
「ん?」
 呼ばれて振り向くと,茜が手を振っている。
「送ってくれてありがと。気をつけて帰りなさいよ,おやすみ」
「おう,分かってるって。じゃあな,また学校で」
 そう言って自転車に跨り遠ざかる背中を眺めた茜は扉を閉めた。
 玄関から家に上がろうとして気づく。
「あれ?今日はお父さんもう帰ってるの?」
 玄関に黒い革靴が揃えて置いてある。
「ええ,今お風呂に入ってるところよ。玄くんに会いそびれたって聞いたらきっと悔しがるわね」
 優越感に浸って微笑む母親を見て,茜は内心で頭を抱えた。
「我が家も恵さん達と同じだったか・・・」
「あっ,そう言えばお父さんがあなたにってなんかCDみたいなの持ってきてたわよ。透明のケースに入ったやつ」
 茜はすぐにピンと来て喝采をあげた。
「やり!玄より早く出来るじゃない。明日にでも自慢してやろうかしら」
 悔しがり,羨ましがる玄の姿を思ってわくわくしながらリビングの父親の荷物をあさりに行く。
「茜ちゃん…明日も玄くんに会うなら今度はうちにご招待なさいな」
「だから,茜『ちゃん』はやめてって言ってるのに…あった!母さん,これ持って部屋に行くからお父さんに言っておいてね」
 ポニーテールをふわふわと揺らしながら二階に上がっていく愛娘を見送った母親は小さく溜息をついた。
「玄くんはとってもいい子なんだけど…あの二人が結婚したら電気代がかさみそうねぇ」
 どこか的のずれた心配をする茜の母であった。


第3章 ~完~
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[ 2008/03/02 13:43 ]

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コメント
--- ---

なるほど、こういう展開とは我が目でも読めなんだw

これは茜が三国志~武幽電~をやり始めるフラグが(ry
咲夜 * URL [編集] [ 2008/03/02 18:48 ]
--- ---

なんという青春ストーr
茜・・・ツンデレ属性は短期反復型ですね^^^

これ最終的に戦う事に・・・っと、想像は自分の中でだけ、ですよねーw

かなり完成度高くないっすか?w
第4章、待ってますよー。w
優兎 * URL [編集] [ 2008/03/03 12:34 ]
--- ---

>咲夜さん
いつもありがとうございますm(_ _)m
新キャラ登場の展開ですね…
参加フラグは気付かなかったことに…^^;
次章はいよいよゲーム開始です(^^)

>兎さん
コメントありっす~
いやぁ、ツンデレにしたつもりはなかったんですが(笑)
茜はそんな型式だったんですねf^_^;
話はラブ入りで進みますよ~(^^)
伏 * URL [編集] [ 2008/03/05 08:25 ]
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